HDDの構造

HDDと言えば,媒体の円盤(プラッター)は,外れないのが普通。
しかし,昔はハードディスクは,外せるのが普通の時代がありました。

1970年頃に大型のコンピュータに使われていたハードディスクは,媒体が外せるのが普通でした。タイトルに掲げた,IBMの3330(1971年出荷) ディスクパックがそれです。
大きさとしては,直径は約30センチ,高さ20センチ,円盤の数11枚。
一つのパックで,100MBでした。
ドライブから外している時は,保護のためにプラスチックのケースに入っていました。

写真は,Wikipediaに登録されているDysanという互換機メーカーのディスクパックです。
写真はむき出しですが,実際には装置から外している時は,プラスチックのケースに収納されています。現在のHDDと比べるとその大きさに圧倒されるでしょう。
100MBのディスクパックも200MBのディスクパックも形状は全く同じです。




ドライブそのものは,大きなロッカーにドロワー(引き出し)のような構造でした。ドロワーを引き出して,ディスクパックをセットし,運転していました。
当然,ヘッドクラッシュ事故も起きる訳で,事故が起きた時には,ドライブから異音がします。停止させてみるとドライブの中は茶色い磁性体の粉だらけということが,よくありました。

当時の銀行などには,このハードディスクのロッカーがずらりと並んでいました。
1000ドライブ位が並んでいたといいますから,壮観だったことでしょう。
その後,1974 年には,IBM-3330-11 が発売され,容量が1パックあたり200MBになりました。
当然のことながら,国内のメーカーも同様の製品を出していました。
このIBM-3330-11は,1983年まで販売されていました。

1973年には,IBM-3340 装置が発売されました。これはディスクパックとヘッドが一体となりプラスチックのケースに納められた構造のものでした。容量的には,カートリッジあたり,35MBと70MBの二種類がありましたが容量的には小さいものでした。。

その後,1976年にはIBM-3350が発売されるという大きな転機がきました。
このIBM-3350は,ディスクは外すことができない構造となっていました。
容量的には317MBと,そう大きなものではありませんでした。
大きさもプラッターの直径が11インチ位あったと記憶しています。
発表された時には,このようなハードディスクをどう使うのか疑問を持った覚えがあります。
しかし,このような構造のハードディスクが進化し,現在のHDDになっている訳です。
当時,現在のような手のひらに乗るHDDが1TBなどと誰が予想できたでしょうか。
なんと,IBM-3330-11と比べて,5000倍の容量です。
当時の日本一の銀行の持っていたハードディスク容量を超えると思います。
技術の発展には,驚かされます。

HDDと言えば,構造の記事で説明しているように,データを書き込んだ円盤(プラッター)やヘッドは,完璧にほこりを除いたチャンバー内で回転しています。

本家の米国では,いつ頃から発売されていたのか,はっきりとはわかりませんが,1995年頃に日本でもSyquest社から,リムーバブルディスクが発売されました。
リムーバブルディスクとは,ハードディスクの円盤(プラッター)だけを交換できるようになった構造のハードディスクです。メディアの大きさは,ほぼMOと同じ位ですが,速度に関しては圧倒的にこちらの方が高速です。
メディアを交換することで,ハードディスクの容量を増やすことができ,またバックアップとしても使えるというものでした。メディアとしては,44MB/105MB/270MBの3種類の製品があったと思います。
手元に105MBの製品用のメディアが残っていましたので,写真を載せておきます。


当時のパソコンの内蔵HDDは,100〜512MB程度だったと思いますので,それなりの容量だったと思います。
日本では,MOがかなり普及していましたし,価格も高かったためあまり普及はしませんでした。
Sysuest社は,その後SparQと言う1GBのドライブも発売しましたが,1998年に倒産してしまいました。
Syquest社は,その後再建されましたが,これらの製品は現在では,在庫品のみを売っているようです。
もっとも,価格的には現在のHDDに比べ価格性能比は非常に悪く,保守用としての販売のようです。

Syquest社の販売サイトは,半年前位前までは,あったようですが,現在ではなくなってしまったようです。(2008.10.4追記)

秋葉原では,たまにジャンク品としてみかけることがありますが,現在のOSで動作させるためにはドライバの入手が必要です。
本家のSyquest社では,ドライバーへのリンクが切れています。
探してみたところ,
http://www.storagedrivers.com/
には,まだWindows/XP用のドライバがあるようです。

リムーバブルHDD

最近,コンピュータ調査会社のInternational Data Corp.(IDC)は,リムーバブルHDDがローエンドのコンピュータのバックアップ媒体として,今後伸びていきそうだという調査内容を公開した。
リムーバブルHDDとは,懐かしい言葉で10年位前になくなったと思っていたが,ニュースに接して調べてみた。

どうやら,ここで言うリムーバブルHDDとは,HDDをパッケージに入れてパッケージごと,コンピュータから抜き差しする構造のものを言うらしい。パッケージには,耐衝撃性などに工夫が施され,バッアップ媒体として使い易くされているらしい。
リムーバブルHDDに関しては,標準化の作業も進行しており,今後発展してゆくとのこと。

秋葉原や量販店の店頭では,裸のHDDを入れてHDDを交換できるようにするためのケース(カートリッジ)が市販されているが,信頼性の面では不安がある。
動作中にコネクタの接触不良など起こしたら,ファイルシステムが壊れてしまい,容易に修復できなくなってしまう。また,メーカーが違えば,物理的形状も違い,互換性がない。このあたりが標準化され,信頼性が向上すれば,バックアップ媒体としてHDDの利便性が向上する。

これに関連して,現在ビデオカメラ等の記録媒体としてHDDが使用されているが,それについての標準化に関して,iVDRという規格が家電メーカーを中心に検討されているらしい。
こちらも,耐衝撃性では900Gの衝撃に耐えるとのこと。
容量とスピードの点で,バッアップとしては使いにくいかもしれない。

リムーバブルなHDDは,30年以上も前に,大型コンピュータ用として広く使われていた。HDDと言えば,リムーバブルHDDが普通であった時代である。
これに関しては,稿を改めて述べてみたい。
HDDのインタフェース

現在,普及しているHDDのインターフェースには,ATA系とSCSI系の2種がある。
通常のパソコンでは,ほとんどのHDDがATAインタフェースのHDDである。
一方,信頼性や拡張性を要求されるサーバ等では,SCSIのHDDが多く使用されている。

●ATA系
ATAは,もともとIDEと呼ばれており,HDDとIBM互換パソコンのマザーボードのバスを接続する規格として開発された。
規格の発展の段階で,ATAと呼ばれるようになった。
ATAはパラレルのインターフェースであり,以下の4種の規格がある。

Ultra ATA33/ATA66/ATA100/ATA133

もともと,パソコンの中に内蔵されるHDDとの接続を前提としていたため,ケーブルに許容される長さが最大45.7cmと短く,またケーブルがフラットケーブルということもあり,外付けのHDDなどへの接続には,利用が困難であった。

HDDの高性能化に伴い,従来のパラレルインタフェースでは,高速化が技術的に限界になったこともあり,シリアルATAの規格が制定された。
現状のシリアルATAでは,300MBytes/secの転送速度が得られ,将来は600MBytes/secまでの規格制定の予定があるとのことである。
また,ケーブル長が1mにまで拡張されている。

外付け用のHDDのための規格としてeSATAが制定され,ケーブル長も2mにまで拡張された。

●SCSI(Small Computer System Interface)系
一般には,スカジーと発音されている。
名前のとおり,小型のコンピュータやパソコンを接続するためのインタフェースとして規定されたものである。
Macintoshでは、SCSIが標準インタフェースとして採用されていた。また,国内のパソコンでも富士通のFM−Rシリーズなどで,SCSIが採用されていた。
SCSIも技術の発展により進化しており,以下のような規格がある。

SCSI/FastSCSI/FastWideSCSI/UltraSCSI /Wide Ultra SCSI/Ultra2/
Wide Ultra2/Ultra160/Ultra320

最新のUltra320では,320MB/sの転送速度を得ており,ケーブル長も12mとなっている。

SCSIもパラレルインタフェースであり,性能上の問題からシリアルのSCSI規格であるSAS(Serial Attached SCSI)が制定され,この規格に沿ったHDDも製品化されている。
3Gbit/秒。最大ケーブル長は6メートル
597911cc.jpgHDD修復に関する本ブログの記事を理解する上で,HDD(ハードディスクの構造を知っておくことは必要です。

ここでは,HDDの構造を図示します。

HDDでは,データはプラッタと呼ばれる円盤の上に記録されています。プラッタは,HDDの容量によって,複数枚のこともありますし,一枚のこともあります。

円盤は,毎分4200〜14,000回転で,高速に回転しており,その上に浮かぶ磁気ヘッドで,データを磁気的に読み書きします。
プラッタ上のデータは,同心円状に記録されており,その同心円をトラックと呼びます。
プラッタが複数ある場合には,同じ位置に複数のトラックがあることになりますが,これらをまとめてシリンダと呼びます。
磁気ヘッドは,スイングすることによって複数のトラックにアクセスすることができます。

CDやDVDでは,光学的にデータが記録されていますが,HDDでは磁気的にデータが記録されています。また,CDやDVDでは,データは,らせん状に記録されていますが,HDDでは同心円の複数のトラックにデータが記録されています。

注) 文部科学省が実施した平成13年度「教育用コンテンツ開発事業」により、「情報機器と情報社会のしくみ」開発委員会により制作され、同、平成14年度「教育用コンテンツ開発・改善・普及に関わる研究事業」で作成された図を利用させて戴いています。